Inside BuildIt

株式会社ビルディットのデザイナー・エンジニアによるブログです

「手段を目的化する」と言っていた開発会社のその後について

エンジニアの富田(@tmtysk)です。八王子で開発会社を始めて3年半ほど経ちました。現在の株式会社ビルディットは、Webサービスのデザインフェーズから開発・運用をお手伝いさせてもらう、デザイナー/エンジニア/採用広報担当合わせて総勢7名のチームになりました。これらのフルタイムメンバーの他にも、アルバイトや業務委託の方とのご縁に恵まれ、合わせて15-20人くらいが弊社での開発のお仕事に関わってくれています。

さて、創業時に以下の記事を書いていたのですが、当時は(僕の記事にしては)ちょっとだけ多くの方に届いていたようです。僕にとっては創業の決意表明みたいなものだったのですが、いろんな方に「読んだよ」と言ってもらったことは嬉しく受け止めておりました。弊社のメンバーには、この記事に共感して参加してくれた者も何名か居り、多くの方が仰っているのですが、発信活動って大事です。

medium.com

勝手にイベント名に親近感をもち、その思想にも共感した builderscon には、2017年, 2018年と協賛させていただき、やっぱりこんなキーワードで企画記事を書いていただきました(ありがとうございます)。2018年のトートバッグは、僕も愛用しています :)

lantern.builderscon.io

さて、前置きが長くなったのですが、そんな「手段を目的化する」って言っていた会社が3年経ちまして、実際どうなんよってところをちゃんと発信しておいたほうがよろしかろうと 採用広報担当に詰められまして、 思いまして、今回改めて振り返ってみることにしました。長文のポエムです。ご興味の方にお読みいただければ嬉しいです。

目次

ビルディットでどんな案件をやってきたの?

ビルディットでの最初のお仕事は、とある研究機関のお仕事でした。Webアプリケーションの開発プロジェクトです。むしろ、ご縁あって、そちらが決まってきたために慌てて法人成りしたという経緯があったりします。法人にするので社名を決めよう、社名は5文字にしよう(呼びやすく、記憶に残りやすいとなにかで読んだ)、ドメインは短くしよう(タイプ数を少なくしたかった)、そんなところからいろんな単語を漁って、ソフトウェア開発用語の「ビルド」を捻って付けました。freee でつくった会社設立登記申請書を手に、雨の日にひとり法務局へ行ったのが、2016年3月7日。

以降、それまでのご縁からさまざまご紹介をいただきまして、某メーカーの新規事業立ち上げのプロトタイプ(とは言っても、まあまあちゃんと動くやつ)開発(Rails)だったり、某スタートアップのECサイト設計をアーキテクチャからがっつり見直す系(CakePHP)の話だったり、某メディアサイトのリコメンドエンジン開発(Python)だったり、ある程度の規模を捌くメール配信システムの開発(Node.js)だったり。いずれも、基本的にはいわゆる月額型の運用開発で関わらせてもらっています。一部、納品型のプロジェクトを手掛けていることもあります。

その後もいろいろやってきまして、最近は、複数の事業会社の業務システム更改や新規事業開発に関わりつつ、いろんなスタートアップのサービスデザインやら設計・開発・運用をお手伝いさせてもらっていたり、システム部門の内製化のお手伝いをさせていただいていたり、という状態です。加えて、半ば個人的な活動になりつつありますが、メンバーズキャリア社の技術顧問として、エンジニアの育成メニュー開発と運用にも関わらせていただいています。

www.wantedly.com

コード書いてる?

創業時はがつがつコードを書いていた僕も、最近はだいぶ仕事コードを書く時間が減ってきました。PR(Pull-Request) をレビューする機会は相変わらず続いていますし、必要とあらば書けるように、各プロジェクトでちょいちょい PR を出したりしていますが、反射神経は落ちてるかもなあ。社内で周りを見渡すと、いつのまにか IDE 使いが増えており、Vimmer は僕だけか.. と思っていたら、最近入社してくれたエンジニアがバッキバキに Vim を使ってくれているので、個人的にはうれしいです。IDE は IDE で、使える人すごいなあといつも思ってしまう。

昨年から社内では、夕方以降に「自己啓発タイム」を運用しており、平たく言うと「自己啓発になるなら何やってても良いよ」っていう時間を運用しているのですが、最近はその時間に Rust 本を輪読しています。さすがにコードを書かないとついていけないので、ささやかな楽しみになっています。

会社、どうですか?

冒頭書いたんですが、いま、フルタイム総勢7名です。

1人から始めて、2年目に入る直前にエンジニアが応募してきてくれました。冒頭に紹介したブログを読んで、興味をもってくれたとのこと。僕がまったく不得手なフロントエンドをしっかりやれるタイプだったので、会社の方向性とかよく考えずに、「一緒にやれたら面白そう」という観点でお誘いしました。

思えば、その後もずっとそういう観点で採用をしてきてまして、その後は、地元大学や高専の優秀な学生さん方とのご縁や、突然のベテランデザイナーとの出会い、薬品開発に携わっていたエンジニア、ゲーム開発やっていたエンジニア、電子カルテ開発をやっていたエンジニアなどなど、いろんな方面からご縁をいただきまして、よしなに分担しつつ、複数のプロジェクトを進行しています。八王子という土地柄、大学がそれなりに多いのですが、学生の皆さんに対し、専門性があり、かつ社会人先輩と交流できるような仕事の場を提供できていることは、お互いに良い刺激になっているのではないかなと思っています。

あと、もともとはソフトウェアエンジニアリングの会社として創業したのですが、デザイナーに居てもらえると、やっぱりアウトプットのクオリティがグッと上がる。いまは、あと、1,2名のデザイナーに参加していただきつつ、チームのアウトプットをさらに高めていく活動ができると良いなと思い、採用活動もがんばっています。(というわけで、採用ページを貼りますので、よかったらご覧ください。)

bldt.jp

自分の立ち位置的には、PM 的な関わり方になることが増えてきまして、昨年後半からは並行で走るプロジェクトの数も増え、正直「けっこうキツイな、こんなにいろいろやれないな」と思っていました。が、おかげさまで僕にもメンバーにも良い変化を起こしていくことができ、いろいろ任せられるようになっていきまして、いまもなんとかやっていけています。

経営者や PM の観点だと、技術そのものだけではなく、事業の操業や労務管理などで考えることも多く、前職でもそれなりにそういった立場ではありましたが、いままで以上にメンタルを鍛えられてきました。が、たぶん、自分は人と向き合うのが好きなんでしょうね。コンピュータも好きなんですが。なんだかんだで、楽しくやれています。

創業時に書いていた「腕を磨く場所、志をたてる場所」そんな居場所をつくりたいという想いは、思い返してみても1ミリもズレることなく走ってきていますし、僕が何より、そこに関わる人たちと向き合っていたい、と思っているので、突然のカミングアウトみたいになっちゃうんですが、たぶんこの会社は、そこまで大世帯にはならないでしょう。人数が増えると、みんなのことがわからなくなってしまう。

儲かってますか?

どこまで行っても受託会社ですので、そこはご想像ください。いまのところ、本当にありがたいことに、お仕事はそれなりにいただけておりまして、間接経費はさほどかからない単純な業態ですので、売上の推移はわかりやすく社員数に応じて伸びています。昨期と昨々期には、僅かながら決算賞与も出せました。お世話になっている方々には、この場でも御礼申し上げます。いつも本当にありがとうございます。

どうやら、お仕事をいただけている限りは食べていけそうです。いまのところは、ですけど。

ただ、僕たちがこれからも食べていけるかどうかは、コモディティ化していく技術や、グローバル化している技術者の競争環境のなかにおいて、僕たちが腕を磨き続けて、生産性を高めつつ、しっかりと価値提供し続けていけるかどうかにかかっています。

仲良し会社なの?

誤解を恐れずに言うと、Noです。仕事観ってなかなか対話じゃ伝わらないので、これは言っておいたほうが良いでしょう。僕らは、「受託ってこんなもんだろう」「仲良く、和気あいあいとやっていこう」という価値観を好みません。「こんなもんだろう」といった請負のメンタリティは、衰退の始まりで、むしろ忌むべき。お客様が僕たちに期待するのは、プロフェッショナルの仕事ですので、常に予想を裏切るレベル、プロパーで固定費化するよりもリスクが低く、かつ、強くて頼りになるパートナーを目指し、常に切磋琢磨していくチームでなくてはならないと思っています。運用開発にあぐらをかくのではなく、必要であればお客様チームでの採用や内製化をも支援し、身を退くべきときは身を退く。好奇心が高く、自分に厳しく、全体最適感を持ち、また、それぞれが得意領域を持ち、ちょっとストイックなメンバーが集まっている、そんなチームです。

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良いものをつくり続けるため、つくり続けていけるようになるためには、言いにくいことも率直に言い合える/受け止め合える、ヒリヒリした雰囲気も厭わない、むしろそんな雰囲気のほうが燃える/没頭できる、だから楽しい、そんな会社でありたいと考えています。

あ、念のために追記しておくと、別に仲が悪いわけじゃないですよ。ランチはだいたい(なんとなくの雰囲気のまま)みんなで行ってますし、他愛のない雑談もあったりします。そういえば、いきなり宣伝ですが、最近サービス開発や運用をお手伝いさせていただいている MachiTag でランチマップをつくったりもしていて、だいたい僕たちはこの辺りでランチをしています。(GraphQLを使っているプロジェクトです。)

もし、この記事を読んで、会社の雰囲気に興味をもっていただけるなら、「ゆるはち.it」という勉強会を、メンバーで毎月やっているので、そちらに遊びに来ていただいても良いかも知れません。あるいは、一緒にお仕事やってみたいな、お願いしてみたいなと思っていただけたなら 会社のお問い合わせフォームから、お気軽にご連絡ください :)

自社事業はどうですか?

いろいろ複数のプロジェクトを仕込んではきましたが、正直まだ、そこまでうまく立ち上がってきていないですね。みんなでしっかり育てていきたい、と思えるような事業にはなってきていません。Coreという、僕自身がとても思い入れをもっているサービスがあるのですが、そちらはわりとちゃんと立ち上がってきたものの、事業内容や展開体制を諸々鑑みて、別会社である株式会社ウーシアにて運営をしていくことに決めました。現在、僕はウーシア社のCTOも務めています。そっちは、思いっきりスタートアップしてます。Laravel使ってます。

ビルディット社での自社事業は、稼ぐことを目的としなくても良い、なんてことを冒頭紹介した記事でも書いているのですが、それくらいのヌルい考えだと、そもそも事業は立ち上がってはこないですね。事業づくりは、やっぱりむずかしいです。それでも、引き続きチャレンジはしていきますので、また何かご紹介できるレベルになってきたらお話させてください。

で、八王子、どうよ?

そんな3年半でしたが、そうですね、こうしている間にも世の中は目まぐるしいですね。いろんなイケてるWebサービスが立ち上がっては、すごい勢いで伸びて羽ばたいていってますよね。もちろん、そんなサービスばかりではないことはわかっていますが、そういう事例を見かけては「おお、みんなすげえなあ、がんばってるなあ」と思いながら、僕は僕で、目の前でできることをしっかりと丁寧にやっていく、そんなことをやっているわけです。

会社では月次会を運営していまして、そこで前月の振り返りをしたり、会社のこれまでやこれからについて議論する場を設けているのですが、今年アタマの「僕らのバリューって何だろうね」という議論については、「丁寧・率直・公平」という結論にまとまりました。率直さとか、公平さも、社内外を問わず、僕たちが仕事をしているなかで、とても大切にしている価値観です。

よく驚かれるのですが、決算資料も毎期みんなで読み合わせをしています。最近では、月次会で直近の預金残高を共有することを始めました。おカネの話も含めて、率直・公平でありたいなと。

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そんな会社なんですけど、これからはどうするんですか、どこに向かうんですかって話になりますよね。よく聞かれるんですが、僕たちは、どこにも向かっていない。お客様に求めていただける以上、自分たちの発揮できるバリューを提供していく。それだけです。

ただ、都心から微妙に離れた八王子という街でこういった事業を続けていくためには、相応の文脈も必要であろうと思っています。最近の課題としては、新しいチャレンジをするクライアントが都心に集中してしまっていること。近隣で発生する新しいチャレンジが多くない故に、僕たちが手がけたい先進的なチャレンジが後追いになりかねないことです。単に「都心で疲れたから八王子でやってるんでしょ?」という解釈をされてしまうことがあったとしたら、とても残念。

一方、外部環境社会環境を加味すると、この流れは緩やかに変わっていくとみています。都心の大企業やメガベンチャーも、採用活動や働き方改革の一環で、郊外ブランチやサテライトオフィス、リモートワークや複業従業の運用を広げていくことでしょう。そうなると、郊外であり、大学も多いこの地にも知見や仕事の交流機会が増え、新しいチャレンジも活発になっていくのではないか。

そんな流れを少しでも加速できると良いな、と思い、また、八王子でいろんな創業やチャレンジが起こっていく流れの一助になればと、コワーキングスペースにサテライトオフィスを構えたり、ビジネスプランコンテストの審査員や、起業イベントのコーチとしての活動などにも参加するようにしています。先ほど挙げた ゆるはち.it という勉強会の定例開催も、この文脈ですね。会を重ねるごとにコミュニティメンバーも増え、先日、第14回の開催を終えて、メンバー数は170名を超えました。

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余談ですが、最近八王子市では、「あなたのみちを、あるけるまち。」というフレーズがブランドメッセージとして策定されまして、これ、すごく良いと思うんですよね。自分の生き方に率直で居られる、チャレンジに寛容な、そんな街で、これからもいろいろトライしていけると良いなと思っています。

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これからも「できた!」の喜びを忘れずにいたい

もうすぐ不惑を迎える僕ですが、「僕自身は、社会に対してどんな価値を提供していきたいのだろう」ということは、未だによく考えています。

一人称で仕事していける立場での経験を何年か経て、ようやく気がついてきたことは、僕は、僕じゃない誰かの「できた!」という喜びを、本心から喜べる人間であるらしい、ということです。自分で言うのも、なんか恥ずかしい話ですけど。

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コードを書く時間が減って、僕自身の「できた!」って実感の数は、ひょっとしたら減ってきているかもしれない。でも、この3年半で、目の前で見てきた「できた!」の数は、それまでよりもずっと多いことは間違いない。社内では、毎月1on1の時間を確保していますが、いろいろなメンバーの、キャリアや仕事を考える時間に向き合ってくることができましたし、僕にとってそれらはとても有意義な時間でした。

「できた!」って瞬間って、自分自身のことでもすごく気持ちいいんですが、僕の近くの誰かが、それまでにできなかったことが「できた!」ってなっていたら、それもすごく嬉しいんですよね。僕のこれまでの仕事人生、その前の学生人生を振り返っても、ずっとこの価値観があったような気がしてきていて。

これは、つくり手としての「できた!」に限らず、僕がつくってきたもので、そのユーザーや、仕事上のお客様がいろいろできるようになっていって喜んでくれているのも同様です。「わからん!」「できない!」って苦しんだり、「わかった!」「できた!」って喜んだりできるのって、すごく人間的で尊い感情だと思うのです。しかも、そんな「できた!」の喜びと興奮をつくり出せるデザインやエンジニアリングの仕事って最高。これからも続けていきたいし、そんな価値が認め続けてもらえるような社会だと良いな、そんな風に社会に関わっていきたいなって思っています。

さいごに - ビルディットは、どんな場所になっているか?

「『手段を目的化する』なんて言ってるってことは、独りよがりでつくりっぱなしで逃げるようなやり方なんじゃないの?」と、そんなことは言われたことは無いんですが、そういった見方をされるかも知れないことは、まあ、仕方ないかなと思っています。そこは一緒にやってみないとわからないでしょうが、僕たちは、目の前の仕事にしっかり向き合って、丁寧に仕事を進めたいと考えています。僕が考えていたり、社内でみんなと共有しているような価値観は以下のようなものです。

請負として仕事を請ける以上、僕たちは当事者になりきれない。そこをちゃんと理解した上で、ギリギリまで歩み寄る。どうやったってやり切れないことはわかっていても、お客様よりもお客様事業のことを考えようと努める。そのうえで、最後の最後の判断の提案は49対51で、つくり手のプロフェッショナルとしての提案を推す。

いったん事業会社から離れてみたものの、手は動かし続けたい。あるいは、今はとくにこれといって向き合いたい事業が無い。自宅やコワーキングスペースでひとりリモートワークするくらいなら、チームで空間やプロセスや感情を共有しながらプロダクトに向き合いたい。ひとりではつくり得ないクオリティとインパクトをチームでつくっていきたい。良いご縁や、良い事業に出会えたなら、お互い気持ちよく送り出してあげたい。そんな、フリーランスと事業会社所属の間に位置できるような場所をつくっていけると良いな/こんな価値観と構造がいろんなところに波及していってくれると嬉しいな、そんなことを考えながら、今日もデザインやエンジニアリングの「手段」に勤しんでいます。

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八王子のいちょう並木 *1

最後に、最近読んだこの記事がとても良かったので、ご紹介して終わりにします。また機会があれば書きます。長文お読みくださいまして、ありがとうございました。

medium.com

*1:「いちょう並木」、八王子市、 クリエティブ・コモンズ・ライセンス表示2.1 八王子公式シティプロモーションサイト より使用させていただきました