Inside BuildIt

株式会社ビルディットのデザイナー・エンジニアによるブログです

デザイナーのキャリアを、どう進み、どう育むか - デザイン顧問招聘記念対談レポート(2)

広報の大木です。前半記事 では、 イシジマミキ(デザイン顧問)、 石崎 (リードデザイナー id:uniq )ら、活躍する二人のデザイナーの「これまで」を皮切りに、ターニングポイントの選択、どんなことを考えてキャリアを進めてきたかを聞きながら、デザイナーのキャリアの構造をお聞きしてきました。後半は、多様化するデザイナーのキャリアの「これから」についてお届けします。

前半記事をお読みでない方は、先にこちらをお読みください。

inside.bldt.jp

目次

何を手がかりに自分の進む道を考えたらいい?

──前回は、「デザイナーのキャリアは階層構造ではない」「職域をどのように考えていけば良いのか?」といったお話をうかがいました。

イシジマ ですね。スキルをタイルに見立てて自身がどの分野にスキルが集中しているのか、とかですね。

f:id:miyakmakij:20190617161601p:plain
前回の記事より

石崎 タイルにしてみることで、職域とデザイン領域を俯瞰して地図のようにしよう。という話でしたね。こうして見ると、デザイン領域はどんどん広がってきているし、デザイナーの役割も多様化して迷いやすいかもしれませんね。

多様化の実態

── なるほど、多様化ですか。お二人は多様化をどのような時に感じますか?

イシジマ 身近で感じるものとしてはデザイナー同士のコミュニティですね。

以前はデザイナー向けの勉強会などで話題にあがる悩みごとなんかは大体同じようなものでした。Photoshopがどうとか、コーディングでどうとか。でも少し前から アプリとWebとで話が通じなくなり、グラフィックデザインとUIデザインでもまた話題が異なり... 。さらには「組織のデザイン」としてチームの作り方やコミュニケーションなどの 概念的なものを主軸とするデザイナー も増えてきました。 「デザイナーってこうだよね」という話が通じなくなってきた ように感じます。

石崎 私は現場でも感じます。

モノの普及でユーザーの行動範囲が広がり、技術的進歩でできることが広がり、それによってスピードを求められるようになりました。説得力のあるUIデザインを設計するには、いわゆる 「デザインを作る」前後の文脈をしっかりキャッチアップしていくことが理想的 ですし、さまざまな職種の方との コミュニケーションの溝を埋めていく工夫が必要になってきている ように思います。

自分の「興味」を信じる

──なるほど。それでも、既にデザイナーとしてのキャリアをある程度持っている人は、それまでの経験が自分が進むべき選択肢の手がかりになりそうですね。一方で、それまでのキャリアがなければ、その広い範囲の中で自分がどうすべきかというのはかなりの難問になってきているように思います。これからデザイナーを目指す方や、デザイナーになったばかりの方は、どうやって地図上に目的地を置いたり、進む道を決めたりすれば良いのでしょうか。

イシジマ 私は、自分の持っているスキルのタイルを確認した上で、 まずは興味のあること、やりたいことの自分の意思を信じて進んでみる 、ということで良いと思いますね。たとえば、知りたいことをネットで検索するのと同じような感じで情報から自分の進む道の正解や妥当性を得ようとしても、それはうまく行かないと思います。

それで「市場観」を得られたとしても、「市場」に自分を合わせていくと、さまざまな理由で長続きしなくなります。なので、まず自分の興味に沿って進みましょう。 市場に合わせるのは発信方法だけで良い と思います。発信をうまくできればおもしろそうな事やってるなと拾ってくれる人が現れますし、そんなに食いっぱぐれることはないと思うんですよね。

職域が一気に多様化して、最初の頃は実態も情報も思想も全てが混沌としていた時期がありましたけど、今現在は「整い始めてきている」という変革期だと捉えています。それなりに情報整備されてきてはいるけど、実態にはまだまだ自由度があり、肩書きも自分で自由に作れます。私だったら「デザインコミュニケーター」かな(笑)

自分の興味を信じて進み、それを市場に合わせて適切に発信していく、進むべき道はそこに出来ていく と思います。

他者の活動と比較する

石崎 私もイシジマさんの「自分を信じて」ということに重なりますが、 自分が何をやっていて気持ち良いか、逆に何がストレスか、そこから分析していくことから始める のが良さそうだと思っています。もしそこに「自分にしか出来ない仕事」とかの付加価値をつけたいとすれば、自分がやっていて楽しい仕事の中でも他の人とかぶりにくいものを見つけたりしても良いし、そこで他者と比較してもいいと思います。

私は他者の存在を手がかりに考えることが結構ありますね。自分の興味の方向性と似たような人を探してその人のやっていることを参考にしたり、この人とこの人の中間くらいのことを自分はやりたいなとか、自分自身を分析して、他者との比較も合わせて考えます。

ちなみに「他者」を探すのは、もっぱらネットになりますが、情報過多のネットの中で自分が欲しい情報を取捨選択するのは思いのほか難しいので、 手当たり次第に情報を拾わない ようにしています。 ツイッターやブログで、自分の方向性と親和性がある人、載せている情報が参考にしたいものが多い人に絞ってフォローしていくと、その人の周辺にいる人にも親和性を感じる人の層ができていたりします。そこから広げていく。

定期的に振り返る

──とはいえ、自分の信じた道だけを走るのは、なかなか不安なようにも思います。

イシジマ そうですね。どこかの方向に一旦進むことができたとしても、突き進むだけではなくて 定期的に振り返りをして、必要であれば軌道修正する ことも大事ですよね。

できればそれは、自分だけで内省するだけではなくて、客観的視点がある方が良いと思います。先輩や上司でも良いし、同僚でも良い。デザイナーとしての自分を知っている人が良いと思います。そして短期的なスパンで振り返りをするのが良いです。

デザイナーにとって良い成長環境って?

デザイナー育成の体系化はできるのか

──少し話題を変えますが、デザイナーのキャリアの多様化が進むなか、「成長」という側面をどのように捉えれば良いのでしょうか。どのような環境であれば、デザイナーにとって成長しやすいと言えるのでしょうか?

イシジマ 私が駆け出しデザイナーの頃は「見て覚える」という職人気質な徒弟制度が色濃くありました。 反面、 エンジニアはもともと職業の性質的にパイオニア的というか、知の共有がすごくオープンですよね 。勉強会も活発だし、体系化された育成シナリオが、わりとどこでも確立されているように思います。 それと同じような環境が、デザイナーにも出来てくるのが理想 だと思っています。

石崎 ただ、やはり一口に「育成シナリオ」と言っても難しさはありますよね。初級編からある程度まではできると思うんですが、その先かなり分岐するところをどうフォローしていけるか。フォローする側の知識や見極めのスキル、人に向き合うマインドセットなど適性がかなり求められますよね。

イシジマ そうですね。でも、シナリオの工夫と、細かく適切なチェック項目の設定で、 かなりの部分は標準化できる ようにも思っています。 もちろん組織にとっても、誰がどんなスキルを身に着けることができたか正確に把握することは、全社的なアウトプットの質の向上にも寄与すると思います。

育成にはどんな要素が必要?

石崎 では、育成のためのOJTシナリオにはどんな要素を盛り込めばいいのか、チェック項目の設定はどういうことを基準にすべきか、という話ですが、これはイシジマさんに参画してもらってからの毎週のミーティングで議論しましたね!

イシジマ 大体意見はまとまりましたよね。

- 構成要素
  - 実際のプロダクトに近似したシナリオ設定
  - 広い枠組みの中で思考できて、いくらでも失敗できる環境
  - 多面的にモニタリングできるタスクとレビューの設定

- チェック項目のポイント
  - デザインに対して、ハード面(技術・手法)とソフト面(表現・思考)の両方に対してレビューする
  - 細分化したスキル一つ一つの習熟度を可視化する
  - 「その人のデザイン」ではなく「デザイン」そのものに焦点を当てた評価指標

こうしたことを意識して組み込むことで、成長のベースである自分の得意・不得意を知ること、それの客観視ができるようになるんだと思います。

f:id:miyakmakij:20190701160911p:plain
OJTシナリオ設計中のドキュメント

自分の「不得意」を知ることは、それを克服するためじゃない

自分の弱点をどう捉えるか

──トレーニングを通して自分自身の不得意を把握できたら、それは克服できたほうが良いのでしょうか?

石崎 そうとも限らないと思います。得意・不得意の客観視で大事なのは、得意なことを知ることより、「不得意」を客観視できることに大きな意味がありますよね。不得意は弱点とも言い換えられるし、一般的には克服しないといけない「壁」と捉えられることが多いです。以前は自分自身もそう思っていたんですが、今はちょっと違うように考えてます。

私の場合、技術面よりは、コミュニケーションやマネジメントスキルでしたけど、どうにかして克服しないと…!と思いつめていた時期がありました。でもある時点で、それは 「弱点」ではなくて自分の「特徴」「キャラクター」という言葉に転換した方が良いんだ と思うようになりました。

イシジマ わかります!私も実例挙げられますよ。フリーランス1年目のとき、仕事がないと不安だし、独立したんだからデザイン以外もできるようにならないとと思って電話営業とか頑張っていたんです。しかし、電話がすごく嫌で、デザイン制作業務に集中できなくなったんですよね。

そこである時思い切って「電話持ってません」と名刺やメールの署名に記載し、クライアントさんとのやりとりから電話を外したんです。最初はワガママなデザイナーだから嫌がられるかな?と思いましたが、それでも私を活用してくださるクライアントさんが残り、お互いとても気持ち良く仕事ができたので、何を選択して何を選択しないかはとても大切だと気付きました。

石崎 分かりやすい例!

弱点を反転して、高パフォーマンスに転換する

f:id:miyakmakij:20190701145857j:plain

石崎 でもまさに、克服するよりも、その 不得意からくるストレスを取り除くことが、高いパフォーマンスを維持することに直結する んですよね。デザイナーに関しては、不得意はひっくり返して自分の個性にすることができるし、不得意を活かして生み出すものこそ良い創作ができるんじゃないかと思いますね。

イシジマ そう、そのために「不得意」を知ることが大事なんですよね。

ただし、その場合でも客観視も忘れてはいけなくて、弱点を取り除いて心地よく仕事が出来ているか、好きな仕事になっているか、そしてそれがKPIに結びついて良い結果を出すことができているか、そういういろんな角度からの振り返りをすることで、自分のやり方が適切なのか確認することができて、バランスの良い成長に繋がるんだと思っています。

「ビルディットのデザイナー」のブランドプロミス

成長の先に約束するもの

──そろそろまとめに入りつつ、この対談を通して、会社の紹介もしていきたいのですが...笑 デザイナーとしてどんな職域を持つかというのは人それぞれだと思いますが、ビルディットで働くデザイナーの視点から、成長の先に約束できるものって何でしょうか。

石崎 デザイナーでありながらエンジニアのカルチャーも理解できて、その中で自分の価値観を表現できるデザイナーになれること!ですかね。

私はいつも、 「デザイナー」と「エンジニア」の対話の質を高めること、が大事 だと思っています。「対話の質を高める」には…、お互いの共通言語・共通認識がいくつか確立されている状態が良くて、それは技術的な知識のものであったり、マインド上のものであったり。

デザインって、ユーザーにある価値を届けることだけれども、それをやるには一人では難しく、エンジニアとお互いの価値観を認めながら協働して、さらに周囲の関係者を巻き込んでいきたいと思っています。その考え方は、どんな領域のデザイナーにも共通して持っていたら得になるものだし、後輩として入ってくださる方には是非共有していきたいです。

今、イシジマさんとOJTシナリオの評価項目を作り始めているところですが、とても実践的ですぐにでも実務に生かすことができる、押さえるべきポイントがすごく的確な良いものになりそうだとワクワクしています。自分がやってみたいくらい笑

イシジマ しかもそれは一律ではなくて、会社にジョインしてくれた人が自分でシナリオを選んで、目標を設定することができる。そして定期的なレビューを入れる仕組みもある。これがうまく運用できれば、成果がわかりづらい「デザインのマネジメント」に関してもすごく有益な手がかりができそうですよね。

2,3年先に見えるもの

──いわゆる育成期間というものの先は、どんな姿がありますか?

石崎 成長すると視野が広がっていきますよね。

設定した目標をクリアしたら次の目標がどんどん生まれてくるのが、デザイナーという職業を続けていく上で理想的だと思っています。ただその結果外に目標や目的が見つかることもあると思います。

そういうことについてはビルディットはとても許容的ですね。代表の富田さんもよく言っていますが、 会社とフリーランスとコワーキングスペースのような人が集まる場所、それぞれの良いところを持ち合わせたような会社でありたい と。それでいてフリーでいるよりも居心地の良い、良い仕事ができて魅力がある会社でいれば良いと考えているので、その人が目標に向かって進むことについては全面的に応援するスタンスがあると思います。

そういう意味で、自分が進みたい方向や思考に従って採れる選択肢は本当に広いし、しかもどの道に進むとしてもビルディットでの経験は有効に活かせるものになると思います。

職種間の文化の融合

──今回イシジマさんと取り組んでいるミッションの一つに、「デザイナーの文化の醸成」ということがありますが、それはつまりどういうことですか?

石崎 私自身がそうありたいデザイナーの役割として、チームメンバーを良い流れの中に巻き込む力で、組織を健全に促進させる存在になることができる、そして自分自身もメンバーの活動に柔軟に巻き込まれることで相互に促進し合える組織に成長できる、これがデザイナーならではのマインド、文化だと思うんですね。いろんな人の良いところを引き出して物事を前進させるというような。

エンジニアの文化というのは、イシジマさんも先ほど言ったパイオニア的なマインドセットというのと、議論でもコミュニケーションでも効率的にしたい指向性があると思うんですが、そこにデザイナー的な文化が融合することで、 「成長」や「向上」に向けて相互促進的に前進する空気の中に、メンバー全員が参加できる、そんな組織ができるんじゃないか と思っています。

──なるほど、キレイにまとまりました!ありがとうございました!


最初に持っていてほしいのは、「好奇心」

さて、二部構成でお届けしてきたデザイナーお二人の対談はいかがでしたか?ビルディットのメンバーは、デザイナーもエンジニアも「つくることが楽しい。つくることに集中したい」という共通のマインドセットを持っています。

  • なんで、こうなってるんだろう?
  • こうやったら、どうなるだろう?
  • もっとうまくやる方法はないかな?

そんな徹底した「つくることへの好奇心」が、職種の壁を超えて最適なサービスを創り出すための共通言語となります。だからこそ、新しくメンバーになってくれる人にもこの感覚を求めていきたいと思っています。

自分のキャリアや方向性について、それが正しいかどうか確証を持っている人は少ないでしょう、だからこそ新しいキャリアに挑戦するときの不安や劣等感などそれは誰しもが持っていていることですが、好奇心に素直になって自分が作ること・ものに夢中になることで、ビルディットでの世界は大きく拓け、成長できると思っています。ぜひ溢れる好奇心を持ってきてください。

ビルディットでは、作ることに向き合って挑戦したい人を求めています!私たちと働くことに興味を持っていただけたなら、下記のサイトからお気軽にご連絡ください。

f:id:miyakmakij:20190701152951j:plain

bldt.jp