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株式会社ビルディットのデザイナー・エンジニアによるブログです

デザイナーのキャリアの、これまでとこれから - デザイン顧問招聘記念対談レポート(1)

こんにちは。広報の大木です。

ビルディットは、今年2019年4月からデザイン顧問として、イシジマミキさん(以下、敬称略)に参画いただきました。デザイン顧問を迎えるにあたって、目指したことは以下のようなことです。

  • 社内のデザイナー育成・成長のための最適な環境と土台作り
  • 社内にデザイナーならではの視点や文化をより大きく育てる
  • 制作物・成果物に対する、デザイン力・デザイン品質の強化
  • デザイナーとエンジニアの文化融合による、より高い付加価値の追求

現在進行中のイシジマとの取り組みは、弊社リードデザイナーの石崎( id:uniq )と共に、デザイナー育成のOJTシナリオの設計と運用。若手デザイナーでこれからUI/UXデザイナーとして成長していきたいと思っている方にはワクワクするような充実した内容に仕上がってきています!

今回はそんな二人のシニアデザイナーの対談リポート。二人のプロフィールは後述しますが、二人とも現役のデザイナーでありながら、いわゆる専門職としての一般的な興味領域から突き抜けた、教育や組織・社会へのインパクトといった志向を持っているよう。そんな二人のこれまでの来し方行く末について話を聞きながら、「デザイナーの成長とはどんなことか」「それぞれが思う方向に成長を促せる場とはどんなものか」などを考えていきたいと思います。

二人のキャラも内容も濃密なため、ブログは二部構成でお送りします。
今まさにデザイナーとして職域をどう広げていくかを考えている方々へ、答えを見つける一助になれば嬉しく思います。

 

目次

 

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左:イシジマミキ 右:石崎

二人のデザイナーのキャリア年表

まずは、イシジマと石崎ふたりのデザイナーがどのようなキャリアを歩んできたかをざっと紹介します。 

イシジマ history

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  • 地元の栃木でキャリアスタート。高校の授業でのHP制作体験をきっかけにデザイナーを志望。しかしはじめは自分がなりたいデザイナーが、どこで何のデザインをする人なのか、というデザイナーの職業定義や種類がよくわかっておらず、分からないままいろんなところを試行錯誤で転々としながら働いた。
  • 一つ目のターニングポイントは宇都宮のベンチャー企業。デザインだけでなく、会社の事業運営や企画、営業的なことなど全般にやった。
  • 二つ目のターニングポイントは東京での仕事の始まりと、Twitterで広がった世界。勉強会参加で人脈やデザイン業界の職域を一気に広がった。

 

石崎 history

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  • 大学から始めたミツエーリンクスでのアルバイト。デザイン・マークアップを担当。コーディング規約がとても厳密で、また社内教育も熱心な環境。W3Cに準拠したマークアップや配色デザインなどについてきちんとした知識が身につけられた。
  • 卒業後、一度は夢であった漫画家になる。当時Web業界の友人の間で流行り始めていたTwitterをはじめる。そこで再びWebデザイン業界と接点を持ち、改めて興味を持って就職。デザイナーとして就職したドワンゴで、デザインだけでなくもっと一貫してサービス開発に携わることに興味が広がり、ドワンゴモバイルでのエンジニアチーム内のデザイナー職など、興味の方向に沿って進むことが適った。
  • その後も、「もっとこれをやってみたい」「やったことがないこれも経験したい」と興味を持った方向に進んできたところ、コーディングに強いデザイナー職に着地。  

以上、まとめると、二人のデザイナーの歩んできた道のりの違いは、以下のようになります。

イシジマ
グラフィックデザイナー、Webデザイナー、UIデザイナー、組織デザイン、起業、デザイナーの教育事業へ。

石崎
Webデザイナー、UIデザイナー、リーダーやプロダクトマネージャーへ。

 

それでは、ここからは、二人の対話形式で、お送りします!どうぞお楽しみください。


何を・どんなキャリアを目指してきたの? 

イシジマ  私が突き動かされてきた行動原理は2つ。

  1. 自分に無理なく楽しく仕事をしたい!ハードワークになりすぎないにはどうしたら良いかな
  2. 自分ならではの価値で仕事したい。わたしがデザイナーとして世の中に提供できる価値は何だろう

そんなことを考えながら、最初のうちは「デザインマネジメント」、カッコ良さそう!やりたい!とか直感的&能動的に動いてはきたけれど、実際のところその部分でかなり遠回りになりましたねぇ。

目指したいロールモデルがなく、デザイナーの職域や区分もちゃんと理解していない中で、ピラミッドの底辺から上に上り詰めるような階層構造になっていると思っていたんですよね。だからとにかく今やっていることをもっとレベルアップしていけばデザイナーのトップにいけるのかと。その認識がどうやら違いそうだぞっていうことに気付くまでにはだいぶかかりました(笑)当時、自分のロールモデルになるような人が身近にいたらな、とは思いますね。


石崎 冒頭の話と重なりますが、わたしの場合ベースは一つで、自分が関わるプロダクトの開発全体をもっとよく把握・理解したいということ、なぜかというとそのプロダクトがどういう人の何に価値があるのかという本質をしっかり捉えてデザインするのが自分のモチベーションだからですかね。

だから実装のところで手離れしてしまって、自分の思惑とは違う実装になってしまうというようなことがあると残念なんです。自分の思い通りにしたいというわけではなくて、最終的なところまで見届けたいという感じです。

そういうことを突き詰めて考えると、漫画を描くときの目的意識とすごく近いんだと思います。原点回帰。読み手を飽きさせない仕掛け、物語にハマっていく仕掛けを作ることが、UI/UX周りの「ユーザーにこう感じてほしいのでこういう仕掛けを作ろう」とリンクするのかなあと。

あ、でも私もイシジマさんと同じ、ある時までデザイナーのキャリアって階層構造だと思っていました!だから仕事の範囲をもっと広げようとすると、結局は事業を作る人になるしかないのかなと思って大変な思いをしたことも。
でもやはり今は、上からじゃなくてもっと違う方向からのアクションもあるんだと分かってきましたね。


階層構造じゃないデザイナーのキャリア。では何構造?

 

イシジマ もともとイメージしていた階層構造っていうのは例えばこんな感じです。

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このピラミッド的なイメージも完全に間違いではないけど、下の段のスキルを磨くことが上の段にいく術ではないってことです。逆にいえば、グラフィックデザイナーの経験がなくても最高ブランド責任者になることは可能なんですよね。

いまの時代、デザイナーのキャリアはものすごく多様化していて、進みたい方向によって身に着けるべきスキルは千差万別になっています。私が考えるいまの時代のキャリア構造はこんな感じです。

(*下の図のタイルに入っているスキル名称や並び順は正確なものではありません。イメージとして捉えてください)

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こんなふうに、一つひとつのスキルのタイルが連なった状態をイメージします。
そしてこれはデザイナーの職務領域マップみたいなもの。

デザイナーのキャリアの出発地点ではこの中の2つか3つくらいのタイルしか持っていないですよね。そこから実務を通してある程度は自然とタイルの範囲は広がっていき、更に自主的に勉強したりすることによって領域は広がっていきます。タイルが密集しているエリアが自分の得意領域であり、今自分がいる位置。

階層構造ではないというのは、スキルとスキル同士は上位互換の関係ではないものがほとんどで、一つのスキルだけを高めたからといって他のスキルの互換性はないということです。

例えば、将来的にブランディングの方面で活躍したいのに下積みだと思ってグラフィックを一生懸命やるのは、無駄とまでは言わないけど、他の近道がいくらでもあるってこと。ちなみにその例は私のことですけどね(笑)

私の場合、理由はミーハーでしたけど、デザインのマネジメントがやりたいという目標があって、それならマネジメントのスキルを身に着ける努力をすべきでした。でもそんなこと全然思いつきもしないで、とにかくデザイナーとしての表現力とか技術力を磨いていけばそのうち自然とマネジメントへの扉が開くと思っていました。いつ開くのかな〜?って。

デザイナーとして活躍できるフィールドを広げていくには、上層に行く、ではなくて、スキルのタイルを広げていくイメージを持つことだと今は考えています。
もし最初からなりたいデザイナー像があるなら、そのデザイナーはマップ上のどの辺り・方面のスキルを持っているのかを考えて、自分のスキル群・立ち位置と見比べて、補足していくべきタイルを追っていけば良い。進んで行くべき道筋を考えるという感じです。

次にどのスキルを学べば良いかわからなくなったら、自分の持っているタイルから近いところから埋めていくことで得意分野をより強くしたり、進むべき領域の検討をつけたりしても良いと思います。

職域は広げていかないといけないもの?

石崎 いろいろハードル上がりそうなことを言ってしまいましたけど、デザイナーになりたいと思って勉強している段階では、とにかくデザイナーになること自体が目標でその先まで具体的には考えられていないかもしれないですよね。
そもそも「デザイナーになる」がゴールという場合もありそうです。

イシジマ 当時の自分を振り返ってもそれはそうですよね。でもデザイナーという職業って、同じような技術だけを一生懸命磨こうとしたら、同じような職能であふれて差別化できなくなってしまうんですよね。そうなってしまったらデザイナーという職業はすでに飽和してしまっているんじゃないかな。

私個人の事ですが、性格や趣味、学生時代に好きだったもの。そういう自身の個性を活用した方がデザイナーとしても活きるなと思っています。
例えば、犬が好きとか、音楽をやっているとか、人と話すのが好きとか苦手とか。そういう個人の個性が、携わるプロダクトにも表現された方が、好きですね。とくに表現では重要だと思っています。

例えば人を育てるのが好きだから、人事×デザインとか、数字をみるのが好きだから経理×デザインができるとどんな新しい事ができるのかワクワクしますよね。
さらにその領域でまた、自分の知らないものに興味が持てればまた新しい事を学べるし、それが次の糧となる。それを繰り返すことが生きることと同じ意味を持つんだなと。

大きく言いましたが(笑)まとめると、デザイナーとして長く活躍するには、職務領域のタイルを自分らしく一つ一つ埋めていった方がいい。そして、自分の立ち位置、到達したいゴールの位置、そこまでの道筋のイメージをそのマップ上に描く。その3点を意識することで、目標までの道のりがグッと近くに、そして充実すると思います。
 

石崎 地図上の3点のイメージ、私もしっくりきます。…でも目指す方向や目標って、すぐ目の前に現れたりしない場合も多そうです。

それと「この人のようになりたい!」と思っても自分にその人と同じような適性があるかどうかも分からない、といった不安も生まれそう。

次は、自分が進むべき道筋の考え方と、壁を感じたときにどう乗り越えて進むか?という話をしましょうか。


対談の続きは、次回の記事で紹介していきます。

お楽しみに!

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