エンジニアの富田 (@tmtysk) です。Webサービスの請負開発会社として東京都八王子市に創業した株式会社ビルディットは、ことし創業5年目を迎えました。
一人エンジニア会社として創業し、「つくる、はたらく、おもしろい。」というキャッチフレーズを掲げ、4年間会社をやってきたのですが、メンバーも増え、さまざまな案件に関わらせていただくなかで、以下のようなチームの課題も見えてきました。
- 「エンジニアリングの会社」としてのお引き合いが多く、「デザインから入れる」ことが十分に打ち出せていない
- 個々人が強みとする技術領域で、それぞれの請負プロジェクトで仕事をしていると、価値観の拠り所を共有しにくい
人数が少ないうちは、さほど気にならなかった上記の課題も、メンバーが5名を超えてきたあたりから「個人が会社という組織に所属する意味」「チームであり続ける意義」を各人が意識するようになってきていることを感じていました。そこで、「つくり手が、つくり手として仕事に打ち込める場」を維持するためにも、そこに集うメンバーが意識する未来や仕事観/価値観を言語化し、一本の軸として社内外へ共有しておくことが必要だと考えるようになりました。
というわけで、このたび、メンバーで合宿をおこない、株式会社ビルディットのミッション/ビジョン/バリュー(MVV)を以下のように定めました。
ビジョン
Your growth, improve the world. (個々人の成長が、世界をより良くする)
ミッション
Build autonomous learners. (自律的な学習者を増やす)
バリュー
- From scratch (アイデアや解決策を、ゼロからカタチにします)
- With all our heart (丁寧さと誠実さをもって、仕事に向き合います)
- Lifelong learners (自らも学習者として、研鑽を続けます)
本稿は、上記のMVVができるまでのメイキングストーリーを紹介するものです。同様のことで課題を感じておられる方、僕たちのことをより知ってみたいと思ってくださる方など、どなたかの参考になれば嬉しく思います。
なぜ合宿か
会社組織で上記のようなMVV策定を進めるときは、創業者あるいは経営層のトップダウンで推し進めることが一般的だと思います。ですが、弊社は人数の少ない会社ということもあり、メンバー全員が自分ごととして考えることが重要だと考えました。これは、逆に言うと、「こういったレイヤーの話を自分ごととして考えられない(『そういったことは、トップが決めてくれ』となってしまう)メンバーの参画は弊社にはまだ早い」という、ギリギリの規模・タイミングでもあったとも言えます。
また、このような議論を平日業務のなかでやるとしても、日頃はそれぞれの開発プロジェクトの仕事がありますので、PCを開いてしまい、SlackやGitHubの通知を気にしてしまいがちです。普段考えないような、意見を交わす機会がないようなことを吐き出し、言語化するという取り組みをすすめる以上、会社の会議室ではなく、日常から離れる環境を用意するのが適切だと考えました。
というわけで、合宿です。合宿と書きましたが、開発合宿というより、リトリート合宿を意識しました。会場として、BBQ施設や温泉も付いている熱海の別荘型施設をお借りしました。気候も穏やかで、海も見える開放的な空間で、「普段とは違うモードに入る」ことを意識できたと思います。*1
どんな風にやったか
まず、「合宿のしおり」をつくり、合宿実施の目的と目標を以下のように定めました。
目的
2020年度活動目標の認識統一および自社事業開発の目線合わせ
目標
2020年度活動目標とブランドメッセージの決定 自社事業のプロトタイプの完成
こういったことをひとつ言語化して文書に落とすことで、後々の行程計画がブレにくい。普通のことですが、とっかかりとしては大事かなと。
逆に、これが定義できてしまえば、あとは手段はどうとでもできるので、できるだけフラットに、当事者として言いたいことを言い合えるように段取りしました。たとえば、以下のようなことをしました。
- 意見を歓迎し、承認する雰囲気をつくる(各パートで進行係を決める、全員に振っていく、など)
- 料理をみんなでつくる。小さな役割(ニンニクの皮むきとか)も分担していく
- 音楽をかける
- 散歩にいく
実は、当日の段取りはそこまで厳密に詰めきれていなかったのですが、その分、「ここで決めよう」というダイナミックさが生まれ、結果としては全員がそれぞれ役割を持って立ち回ることができたのは良かったと思います。インターネット接続が無い施設だった*2ことは、仮にこれが開発合宿だったとすると致命的だったのですが、そのぶん、全員がホワイトボードや議論に集中することができ、結果としてはこれも幸いしたのかもしれません。
MVVを、どうつくったか
基本的なワークとして、
- お題を定義し、
- 各自が付箋紙にアイデアを書いたものをホワイトボードに貼っていき、
- それをグルーピングしながら、みんなで言いたいことを言っていく
をひたすら繰り返しました。お題としては、以下のようなものが設定されました。
- 現状の自分たちのいいところ・特徴・強み
- 現状の自分たちの気になるところ・課題・弱み
- これからどうしていきたいか・どうなっていきたいか
- 自分たちのビジネスは、なんなのか
いわゆるSWOT分析なのですが、今回は、これに加え ビジネスの教科書 で紹介されていたMVVBマトリクスを組み合わせる形で議論を進めました。
MVVBマトリクスは、このたび初めて知って、使ってみたのですが、これはなかなか盛り上がりました。アイデアを出した後の議論フェーズにおいて「行動/目的」「社会的/組織的」のそれぞれの軸にあるギャップや整合性に着目していくと、「ココがしっくりこないね」「何がしっくり来ないんだろう」という方向に思考を向けていくことができ、議論と相互理解を深めていくことができたように思います。
日中から始めた議論は、途中で調理やBBQ、交代での入浴タイムや飲酒も挟みつつで、24時過ぎまで盛り上がりました。
どのようにまとまったか
夜中の議論は、終盤ほとんどアイデアは固まっていて、ワード選びをおこなっていました。並べたものにフォントをあてて表示の雰囲気なども掴みながら、印象や表現の妥当性、字面やリズムなどを議論していきました。
たとえば、ビジョンの「Your growth, improve the world.」は、当初「Individual growth and social improvement.」でした。ただ、これだと「Individual」の対象がぼんやりしてしまう。このメッセージを受け取った人にも共感してほしいな、と思ったので、「You」を持ってきました。また、「社会をより良くする」という意味で「social improvement」を使ったのですが、ビジョンという、「目指すべき、いま実現できていない姿」を表していくには、社会よりももっと大きな視野で捉えるのが良さそうだ、ということで、「improve the world」としました。「Your growth,」でカンマを入れたのは、その間に「まずは、個人の成長を大事にする世の中でありたい」「その先に、世界の進歩がある」という、段階と余韻を残しておきたかったからです。
ミッションやバリューの表現も、MVVBマトリクスで出てきたアイデアを、もっとリズミカルに入れられないか、ワンセンテンスにできないか、よりシンプルにできないか、などの観点で磨き込みをおこない、結果として、冒頭のような表現にまとまりました。
どれも各人が納得のいく、良いメッセージがつくれたのではないかと思っています。
さいごに
合宿での議論をしてきてわかったのは、やはり、メンバーは創業期に掲げたメッセージに共感して入社してきてくれているのだな、ということでした。いっぽうで、僕だけの力では、今回得られたような、ここまでシンプルなメッセージに落とし込めていなかったということも事実です。
こんなメッセージを、メンバー全員の議論を通して生み出せたことは、そのプロセスも含めて、とても意義のあることだったと思っています。
今回つくったメッセージは 私たちの思い として特設サイトに掲載しました。また、現在、このメッセージを受けて、コーポレートサイトのリニューアルも進行中です。
株式会社ビルディットは、これからも個人の成長や、学びや育成のプロセスに真摯に向き合いながら、「自律的な学習者を増やす」ための仕組みづくりに取り組んでいきます。この領域で新たな仕組みやサービスをつくっていきたい/推進していきたい事業者様や、つくり手の方とご縁になっていけると嬉しいです。ご関心いただけるかたは、ホームページ のお問い合わせフォームや、採用ページ からお気軽にご連絡ください。
5年目の株式会社ビルディットも、どうぞよろしくお願いいたします。
(@tmtysk)